白内障(はくないしょう)は、目の中にある「水晶体(すいしょうたい)」というレンズが年齢とともに白くにごってしまい、視界がぼやけたり、かすんで見えたりする病気です。
手術では、このにごった水晶体を取りのぞいて、代わりに「眼内レンズ」という人工のレンズを入れます。
では、「眼内レンズ」の度数はどうやって決めるのでしょうか?
白内障手術で目の中に入れる「眼内レンズ」は、度数を自分に合ったものに調整できます。
手術前に、どの度数のレンズを入れるかを決めるために、医師がいろいろな検査を行います。
眼内レンズの度数を決めるための流れ
1.目の検査をして、目の状態をチェックする
手術前に、医師がいくつかの検査をして、あなたの目の状態を詳しく調べます。主な検査は以下のとおりです
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角膜のカーブ(形)を測る検査
目の表面(角膜)がどれくらいカーブしているかを調べます。
角膜のカーブが強いほど近視、弱いほど遠視の傾向があります。 -
目の長さ(眼軸長)を測る検査
目の奥行きを測ることで、どれくらい光が屈折するかを計算します。
目の長さが長いと近視、短いと遠視になりやすいです。 -
水晶体の厚さと位置
水晶体の厚さや位置を調べることで、適切なレンズ度数を計算します。
2. 患者さんの希望を確認する
眼内レンズの度数を決める際、患者さんがどのように生活したいかが重要です。医師は次のような質問をします
- 遠くをメインに見たいですか?
・運転をよくする人は遠く用のレンズを選ぶことが多い。
・ゴルフやテニスなどスポーツをする人は遠く用のレンズを選ぶことが多い。 - 近くをメインに見たいですか?
・お化粧をする人は、近く用を選ぶことが多い。
・読書や手元の作業が多い人は、近く用を選ぶと目が楽になる。 - 普段、メガネをどれくらい使いたいですか?
・メガネなしで生活したい → 遠くと近くのバランスを考える。
・メガネがあってもいい → 遠く用または近く用を選ぶ。
3. レンズの度数をシミュレーションする
医師は、検査データと患者さんの希望をもとに、専用のコンピューターを使って「眼内レンズ度数計算式」という方法で、最適なレンズ度数を決めます。
計算に使う有名な方式:
o SRK/T(エスアールケイ ティー)
o Hoffer Q(ホファー キュー)
o Barrett(バレット)など
これらの方式を使って、患者さんの目に合ったベストな度数を導き出します。
眼内レンズの選び方(度数の決め方)
レンズの度数を決める際、次のような選び方ができます。
1. 「遠くがよく見えるようにする」方法(遠方視重視)
運転やスポーツなど、遠くを見ることが多い人に向いています。
近くを見るときは、老眼鏡を使う必要があります。
例:「テレビや運転はメガネなしで見たいけど、本を読むときはメガネをかけるのはOK」
2. 「近くがよく見えるようにする」方法(近方視重視)
読書や手芸など、近くを見る機会が多い人向け。
遠くを見るときにメガネが必要です。
例:「スマホや新聞を裸眼で見たいけど、外出時はメガネをかけてもいい」
3. 「モノビジョン(片目ずつ異なる度数)」
片方の目を遠く用、もう片方を近く用にする方法です。メガネをあまり使いたくない人に向いています。
例:「右目は運転用に遠く、左目はスマホを見る用に」
4. 「バランスよく見えるようにする」方法(中間視重視)
中距離(パソコンや料理など)を意識した調整。
近くも遠くもほどほどに見えますが、メガネの併用が必要な場合もあります。
例:「仕事でパソコンをよく使うので、ちょうどいい距離で見えるように」
レンズ度数を決めるときに考えること
- 年齢とライフスタイル
・若い人(50~60代)は遠くを重視し、老眼鏡を使うことが多い。
・高齢者(70代以上)は近くを重視することが多い。 - 仕事や趣味の影響
・デスクワークが多い → 近くや中間距離を重視。
・運転や旅行が好き → 遠くを重視。 - これまでの視力のクセ
もともと近視が強かった人は、近くがよく見えるようにしたいことが多い。
もともと遠視だった人は、遠くをはっきり見えるようにしたいことが多い。
まとめ
眼内レンズの度数は、次の3つのポイントをもとに決めます:
- 目の検査結果 → 角膜のカーブや目の長さを正確に測る
- 患者さんの生活スタイル → 何を重視して見たいか(遠くか近くか)
- シミュレーション → 医師が計算して最適な度数を選ぶ
自分の希望に合った見え方になるよう、手術前にしっかり医師と相談することが大切です。
通常は両目のバランスを考えて、両目の眼内レンズ度数をそろえることが多いです。
一方、眼内レンズ度数を左右の差をつけて、見える範囲を広げる方法がを「モノビジョン」といいます。多焦点眼内レンズを用いなくても、遠くと近くの両方にピントを合わすことができますが、左右でピントの合う距離が異なるために、立体視がしにくくなったり、眼精疲労や斜視、眼鏡処方が困難になる等のリスクもあったりするため、慎重に検討する必要があります。