オルソケラトロジー(角膜矯正療法)は、「寝ている間に視力を矯正する」という画期的な方法ですが、眼鏡や通常のコンタクトレンズ、あるいはレーシックなどに比べると、まだ一般的な普及には至っていません。
その主な理由は、「コスト」「手間」「適応範囲の狭さ」の3点に集約されます。
1. 費用のハードル(保険適用外)
最大の理由はコストです。通常の眼鏡やコンタクトレンズと比較して、初期費用や維持費が高額になります。
- 自由診療: 健康保険が適用されないため、全額自己負担となります。
- 高額な初期費用: 両眼で15万〜20万円程度が相場です。
- 維持費: 2〜3年ごとのレンズ買い替え(数万円)や、日々のケア用品代がかかります。
- 補足: 医療費控除の対象にはなりますが、それでも導入のハードルは高いと言えます。
2. 管理の手間と感染症リスク
「寝るだけ」といっても、実際には毎日の厳格な管理が求められます。
- 毎日のケア: ハードレンズ特有のこすり洗いや消毒が必要です。使い捨て(ワンデー)コンタクトのような手軽さがありません。
- 感染症のリスク: お手入れを怠ると、角膜感染症などの重篤なトラブルにつながるリスクがあります。「ずぼらな人には向かない」とされる所以です。
- 睡眠時間の確保: 効果を出すためには、毎日6時間以上の睡眠が必要です。睡眠時間が不規則な方やショートスリーパーの方には効果が出にくい場合があります。
3. 矯正力の限界(強度の近視には不向き)
誰でも受けられるわけではなく、医学的な限界があります。
- 適応範囲: 軽度〜中等度の近視には有効ですが、強度の近視(-4.0D以上など)や強い乱視には効果が出にくい、あるいは矯正しきれないことがあります。
- 一時的な効果: 手術(レーシック等)とは異なり、レンズ装用を中止すると角膜が元の形状に戻り、視力も戻ります。これを「可逆性があり安全」と捉えるか、「一生続けなければならず面倒」と捉えるかで評価が分かれます。
まとめ
上記のような理由から、大人の視力矯正手段としては「レーシック/ICL(恒久的)」や「眼鏡/コンタクト(手軽・安価)」の方が選ばれやすい傾向にあります。
一方で、現在オルソケラトロジーが注目され、普及し始めている分野は「小児の近視進行抑制」です。
- 子供はレーシックが受けられない。
- 近視の進行を抑える効果がデータとして示されている。
- 親が管理すればケアの問題もクリアできる。
このように、「大人の一般的な視力矯正」としては普及しにくい要素が多いものの、「子供の治療」としてのニーズは高まっています。
