レーザーの波長ごとの特徴と比較(532nm, 577nm, 647nm)
波長(色) | 特徴 | メリット | デメリット |
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グリーン(532nm) | メラニンと酸化ヘモグロビンの両方に吸収されやすい。 | ✅ 網膜の光凝固に適している | ❌ 黄斑部への影響が大きい(キサントフィルに吸収されるため) ❌ 熱損傷のリスクがある |
イエロー(577nm) | 黄斑部のキサントフィルに吸収されにくく、酸化ヘモグロビンに選択的に吸収される。 | ✅ 黄斑部へのダメージが少ない ✅ 選択的な治療が可能(血管や病変部のみをターゲットにできる) ✅ 熱影響が少なく、精密な治療が可能 |
❌ コストが高い(装置が高価) |
レッド(647nm) | 酸化ヘモグロビンやメラニンの吸収率が低く、深部(脈絡膜)に到達しやすい。 | ✅ 深部まで届く(脈絡膜の病変に有効) ✅ 散乱が少なく、網膜外層に影響を与えにくい ✅ 低エネルギーでの治療が可能 |
❌ 選択的な吸収が難しい(血管病変には効果が弱い) ❌ 熱損傷を起こしやすい場合がある |
どのレーザーが最も優れているのか?
レーザーの適性は治療する病変の種類によるため、単純に「どれが一番優れているか?」というより、「どの症例に適しているか?」が重要です。
病変の種類 | 推奨レーザー | 理由 |
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黄斑浮腫(DME, RVO) | 🟡 577nm | 血管に選択的に作用し、黄斑部への影響が少ない |
糖尿病網膜症(PDR) | 🟢 532nm | 新生血管の閉鎖に適している |
中心性漿液性脈絡網膜症(CSC) | 🟡 577nm 🔴 647nm |
577nmはキサントフィルに影響を与えずに血管閉鎖できる。647nmは脈絡膜病変への影響が少ない |
網膜剥離(裂孔) | 🟢 532nm | 網膜光凝固に適している |
加齢黄斑変性(AMD) | 🔴 647nm | 深部(脈絡膜)の病変に届きやすい |
結論
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- 532nm(グリーン)は網膜光凝固や新生血管治療に優れるが、黄斑部のダメージリスクがある
- 577nm(イエロー)は黄斑部に優しく、安全に血管治療ができるため、最もバランスが良い
- 647nm(レッド)は深部の治療(脈絡膜病変)に向いているが、血管病変には向かない