目の老化

2025.06.05

白内障はすぐに手術が必要な病気ではありません

白内障と診断されると、「手術が必要なんですか?」と不安になる方が多くいらっしゃいます。 しかし、実は白内障は、すぐに手術が必要な病気ではありません。白内障は年齢とともに誰にでも起こる自然な変化です。
そして、その進行や症状の程度には個人差があり、手術を「するかどうか」「いつするか」は、その人の状態や生活スタイルによって異なります。このページでは、「白内障手術をしない方がいいケース」や「手術を急がなくていい理由」を、眼科専門医の視点でわかりやすくお伝えします。

白内障ってどんな病気?

白内障とは、目の中にある「水晶体(すいしょうたい)」という透明なレンズが濁ってしまう病気です。水晶体が濁ると、光がうまく通らず、次のような症状が現れます。

    • ものがかすんで見える
    • まぶしく感じる
    • 二重に見える
    • 視力が低下する

白内障の多くは「加齢性白内障」といって、加齢にともない誰でも起こるものです。
60歳以上では半数以上、80歳以上ではほとんどの人に何らかの白内障があると言われています。

白内障の進行はゆっくり

白内障は一部を除いて、急激に進む病気ではありません。多くの場合、何年もかけて少しずつ進行します。
そのため、診断されたからといってすぐに手術が必要になるわけではなく、生活に不自由を感じるまで様子を見ることも可能です。
進行の速さは人によって異なり、早い人では1~2年で視力に影響が出ますが、10年以上変化の少ない人もいます。個人差があるので、ケースバイケースということになります。

「手術しない方がいい」主なケース

では、どのような場合に「白内障手術をしない方がいい」と判断されるのでしょうか。主な例を紹介します。

① 視力や日常生活に支障がない

「診断されたけど、見え方は変わらない」「普段の生活に不便を感じていない」
→ このような方は、経過観察だけで十分です。

② 持病がある、手術リスクが高い

心臓病・呼吸器疾患・抗凝固薬の使用などで、手術にリスクがある方もいます。また、白内障の術前検査で重篤な疾患が見つかる方もいます。特にハイリスクの場合は、白内障の手術は後回しにして、大きな病院で治療が必要な場合もあります。
無理に手術するより、リスクと利益を比較して慎重に判断します。

③ 白内障以外の目の病気がある

たとえば、緑内障や加齢黄斑変性などがあると、白内障手術をしても十分に視力が回復しないことがあります。
まず他の病気の治療を優先する必要があります。

白内障手術の「適切なタイミング」

手術のタイミングを決める大きな目安は、視力だけでなく「生活の質(QOL)」に影響があるかどうかです。

次のような場合は、手術を検討する価値があります。

    • 運転免許の更新に必要な視力を満たしていない
    • 本や新聞が読みにくくなった
    • まぶしくて外出がしづらい
    • 誰の顔か分かりづらくなってきた
    • インスリンの注射が打てない
  • 反対に、こうした不便を感じていない場合は、無理に手術を受ける必要はありません。

経過観察という選択

白内障と診断されたあとも、半年〜1年ごとの定期検査で進行状況をチェックできます。

眼科では以下のようなことを確認します:

  • 視力検査

    • 細隙灯(さいげきとう)検査による濁りの評価
    • 他の眼病(緑内障・網膜の病気など)の有無

患者さん一人ひとりにとって最適なタイミングを見極めることが大切です。

メガネや生活習慣での対策

白内障が初期の場合は、メガネの度数調整だけでも快適に過ごせることがあります。また、以下のような工夫で見え方が改善することもあります:

    • UVカットのサングラスでまぶしさ軽減
    • 部屋の照明を明るくする
    • 活字の大きな本を選ぶ

つまり、手術以外の選択肢もあるということです。

患者さんからよくある質問

Q. 白内障があると失明するんですか?
→ いいえ。白内障自体は「視力低下」にはつながりますが、すぐに失明とはなりません。ただし、進行すると治療が難しくなるため、早めの手術をおすすめします。

Q. 手術しないと他の病気になりますか?
→ 通常はなりません。ただし、「過熟白内障」といって長期間放置すると炎症などを起こす可能性もあります。水晶体が分厚くなることで、隅角という水の通り道が狭くなり、緑内障のリスクが上がります。白内障の濁りで眼底検査が精密にできないため、網膜剥離などの眼底疾患の発見が遅れる可能性があります。

Q. 手術を断ったら、もう一生できませんか?
→ いいえ。後からでも手術は可能です。必要になったタイミングで考えれば問題ありません。

手術をしない選択を尊重します

当院では、「手術を前提とした診療」ではなく、その人にとってベストな選択肢をご提案することを心がけています。

  • まずは不安や疑問をしっかりお伺いします。
  • 無理に手術を勧めることはありません。
  • 経過観察をご希望の方には、丁寧なフォローを行います。

「とりあえず相談だけ」という方も大歓迎です。

まとめ:あなたにとっての最善を一緒に考えましょう

白内障は、誰にでも起こるごく自然な変化です。
そして、「手術する・しない」は、その人の価値観や生活に応じて決めるべきものです。

    • 生活に不便がなければ手術しなくてもOK
    • 他の病気や体の状態を考慮する必要もある
    • 定期的な検査で安心して様子を見ることができる
    • 手術のタイミングは「あなたのペース」で決められる

当院では、無理に手術を勧めることなく、一人ひとりの目と心に寄り添った診療を提供しています。

気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

合わせてこちらのQ&Aも参考になさってみてください。
白内障手術はしない方がいい場合があるのでしょうか?

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