白内障

2025.06.05

【専門医が解説】白内障手術後の過ごし方と注意点まとめ

本日は「白内障手術後」に焦点を当て、手術後のケアや注意点、よくある質問などをくわしくご紹介します。手術を終えたあとに「次に何をすればいいの?」と不安を感じる方も多いと思いますので、ぜひ参考にしてください。

目次

1. 白内障手術後の経過イメージ

まずは、術後の大まかな流れをイメージしましょう。一般的に、白内障手術(超音波乳化吸引+眼内レンズ挿入)は日帰り手術がほとんどです。術後の経過は個人差がありますが、以下のようなスケジュールが目安です。

  1. 手術当日(1日目)

      • 麻酔が切れたあとに軽い痛みや違和感を感じることがあります。
      • 手術直後に、抗生物質の軟膏を入れ、眼帯をして感染を防ぎます。
      • 翌日に来院して、眼帯をとります。
        眼帯を外した直後は、視界はまだぼんやりしていますが、軟膏を洗い流すと、徐々にクリアになっていきます。
    • 術後1週間以内(2〜7日目)

      • 日常生活はほぼ問題なく送れますが、強い運動やうつ伏せは控えましょう。
      • 症状に合わせた点眼(抗生物質・抗炎症薬など)を継続します。
      • 眼帯の代わりに保護メガネを着用します。
  2. 術後1週間~1か月

    •  定期検査(外来受診)を受け、眼圧や前房(目の中の液体)の状態、視力をチェック。
    • メガネの度数調整時期は、術後4〜8週間目が目安です。
    • まぶしさや軽いかゆみなどが残る場合がありますが、徐々に落ち着きます。
  3. 術後2か月以降

      • 視力や見え方が安定し、本格的な生活復帰が可能になります。
      • 緑内障や黄斑疾患など、他の眼疾患があれば同時に管理していきます。
      • 通常は術後3か月ほどで「完治」の基準に達することが多いです。

2. 手術直後~翌日までの過ごし方

2-1. 手術直後の症状

  • 痛み・違和感
  • 麻酔(点眼麻酔+必要に応じて注射麻酔)をしているため、手術中に強い痛みはありません。ただし、術後3~4時間程度で麻酔が切れると、チクチクした痛みやゴロゴロ感を感じることがあります。鎮痛薬や当院指定の目薬を使いながら安静に過ごしてください。
  • 視界のぼやけ
  • 白内障手術では水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを入れます。そのため術後すぐはピント調整が安定せず、視界がぼんやりします。個人差はありますが、数時間~1日ほどで徐々にクリアになっていきます。
  • 出血・充血
  • 目の縫合は非常に小さな創(2.2~2.8mm程度)で行うため大きな出血はありませんが、結膜下出血(白目に赤い点や線状に血がにじむ)は術後数日間見られることがあります。これは徐々に吸収され、1~2週間ほどで改善します。

2-2. 眼帯、保護メガネの装着

  • 手術直後は、手や枕カバーなどが誤って傷口に触れるのを防ぐため、眼帯をつけて帰宅していただきます。
  • 1日目(帰宅後)は就寝時も含め、原則的に外さずに装着。
  • 翌日、クリニックに受診いただき、眼帯を外します。外したあとは、日中に保護メガネやサングラスをかけて保護してください。

2-3. 入浴・洗顔・シャワー

  • シャワー・顔洗い
  • 術後翌日から可能。ただし、目に強い水流が直接かからないよう注意してください。洗顔の際は、目をこすらず、ぬるま湯で優しく顔を流す程度に留めてください。
  • 入浴
  • 術後2~3日目以降からOK。湯船に長時間つかると蒸気で目がふやけ、ばい菌が入りやすくなるため、最初の数日は短時間の入浴を心がけましょう。

2-4. 点眼(目薬)の使い方

術後は主に以下のような点眼薬を処方します。(医師の指示に従って使用してください)

    • 抗生物質点眼(細菌感染予防)
      手術直後~1-2月程度、1日4回を目安に点眼。
    • 抗炎症点眼(炎症・腫れの抑制)
      手術直後~1-2月程度、1日4回使う場合が多い。
    • 非ステロイド抗炎症点眼(黄斑浮腫の抑制)
      手術直後~1-2月程度、1日2回使う場合が多い。プロスタグランジンという黄斑浮腫の原因になる物質を抑える働きがあります。
    • アレルギーやドライアイ用点眼
      花粉症やもともとドライアイ傾向の方には、別途ケア用の点眼を追加することがあります。

    <ポイント>

    • 目薬は「点眼前に手を洗う」ことを徹底してください。
    • まぶたを軽く下に引いて、目薬をのせるように落とし、点眼後は目を閉じて1~2分待ちます。
    • 複数種類の目薬を使う場合は、5分程度間隔をあけてください。

    3. 術後1週間以内の注意点

    術後1週間は特に炎症や感染リスクが高い時期です。以下の点に十分注意しましょう。

    3-1. ストレッチや家事はOKだが激しい運動はNG

    • OKな行動
      • 屋内での軽い家事(洗濯物を取り込む、洗い物など)
      • 散歩や軽いウォーキング(目を強く下に向けないように注意)
    • NGな行動
      • ジョギング、エアロビクス、激しい筋トレ、重いものを持ち上げる行為(目の中の圧が上がり、出血や炎症を誘発する恐れあり)
      • スポーツジムでの運動全般やプールでの泳ぎ(目に水が入ると感染リスクが高まる)

    3-2. 家事や仕事の注意点

    • パソコン・スマホの使用
    • 軽い作業であればOKですが、長時間画面を見続けると目が乾きがちになります。適宜まばたきや点眼でケアしてください。
    • 読書やテレビ視聴
    • 見える範囲であれば大丈夫ですが、頭を強く下げた姿勢が長く続くと眼圧が上がることがあります。座った状態でリラックスして行うのがベター。
    • 食事・お酒
    • 食事制限は特にありませんが、術後の体調に合わせてバランスの良い食事を心がけましょう。お酒は術後1週間程度は控えるのが望ましいです(抗生物質や点眼薬の影響で体調を崩しやすいため)。

    3-3. 受診・検査

    • 術後翌日受診(1日目検査)
    • 感染や異常がないかを確認。眼圧測定、視力検査、前房(目の中の液体の状態)チェックなどを行います。術後に一過性の眼圧上昇や感染の兆候があれば、点滴加療を行ったり、追加で内服、点眼、軟膏等が処方されることもあります。白内障がなくなり、眼底検査を行うと、隠れていた眼底疾患がみつかることもあります。
    • 術後3~5日目受診
    • 眼の状態が落ち着いてくれば、点眼薬の種類や回数の調整をします。
    • 術後1週間受診
    • メガネの度数調整の目安を相談します。「遠視に少しずつ慣れていきたい」「近くを見る時のピントを重視したい」など患者さんの希望を伺い、最適なメガネ処方を予定します。

    4. 術後1週間~1か月の過ごし方と検査

    術後1週間を過ぎると多くの方は日常生活に戻れますが、以下のポイントを押さえておきましょう。

    4-1. メガネの度数調整

    • 術後1~2週間で目のピント感が安定し始めます。この時期に「見え方が改善したけれど、少しピントが合いにくい」と感じたら、メガネの度数調整を検討します。
    • 「遠くを見るメガネ(遠用)」を作る場合は、術後4~8週間目が目安です。近見(読書など)用メガネは、もう少し後でも構いません。

    4-2. 定期検査(外来受診)のスケジュール

    • 術後1か月検査
    • 視力、眼圧、前房、レンズの位置などをチェックし、手術による合併症がないかを確認します。点眼薬もこの時点で多くが中止となる場合が多いです。
    • 術後3か月検査
    • 眼の状態がほぼ安定していれば、この時点で「完治」とすることができます。ただし、緑内障や黄斑疾患など他の眼疾患がある場合は継続的に通院が必要です。
    • 以降は、2-3月に1度の定期健診でOKです(他の目の病気がある場合は、医師と相談します)。

    4-3. 視界の変化

    • 色の見え方
    • 白内障手術後は、水晶体の濁りがなくなるため、色が鮮やかに見えるようになります。「世界が明るく見える」と感じる方も多いです。
    • まぶしさ
    • 術後数週間は、まぶしく感じることがあります。特に朝日や夜の車のライトが眩しいと感じやすい時期です。UVカットのサングラスや、夜間の運転ではサングラスを外して走行するなど、シーンに応じて調整してください。
    • 立体感・距離感
    • 最近の眼内レンズは立体感を出しやすい設計が多いですが、一方で術前に強度の近視・遠視だった方は、距離感に慣れるのに時間がかかる場合があります。焦らず徐々に慣れていきましょう。

    5. 術後以降のケア(3か月以降)

    5-1. 長期間にわたる点眼ケアの終了

    ほとんどの方は術後3か月を過ぎると、点眼薬がすべて終了し、日常的に目薬を使う必要はなくなります。もし花粉症やドライアイなどがもともとあれば、別途点眼を継続しますが、手術後の点眼は原則不要です。

    5-2. まれに起こる「後発白内障」について

    • 後発白内障
    • 手術後1~2年経過してから、目の中の「後嚢(レンズを支える袋)」が濁り始め、視力が徐々に落ちることがあります。これを一般に「後発白内障(しょうはつはくないしょう)」と呼びます。
    • 治療法
    • 後発白内障が起こると、YAGレーザーを使った「後嚢切開術(レーザー手術)」で簡単に改善できます。外来で10分程度の処置で済み、痛みもほとんどありません。もし手術後に再び視界がかすみ始めたら、早めに受診しましょう。

    5-3. 定期検査・他疾患の管理

    • 術後3か月以降は、3月に1回程度の定期検査で十分です。視力・眼圧・眼底検査(黄斑や視神経のチェック)を行い、緑内障や加齢黄斑変性などの病気を早期発見します。
    • もともと他の眼疾患がある場合や、糖尿病網膜症など全身疾患の影響がある方は、主治医と相談して適切な通院間隔を決めてください。

    6. よくある合併症と対処法

    白内障手術は一般に安全性が高く、合併症の割合は非常に低いとされています。しかし、まれに以下のような合併症が起こることがあります。症状が疑われる場合は、すぐにクリニックへご連絡ください。

    6-1. 感染性ぶどう膜炎(いわゆる眼内炎)

    • 【症状】
    • 眩しいほどの強い眼痛、まぶたの腫れ、急激な視力低下、目の赤み・充血など。
    • 【時期】

      通常、術後1週間以内に起こることが多い。

    • 【対処】

      細菌感染の可能性が高いため、即座に抗生物質の強力点滴・点眼治療を開始しなければなりません。緊急性が高いため、夜間・休日でも連絡できる体制を整えています。

    6-2. 前房出血・硝子体出血

    • 【症状】
    • 手術直後~術後数日で、目の中に赤い濁りやゴミのようなものが見える場合があります。
    • 【対処】
    • 軽度の出血は自然に吸収されることが多いですが、出血量が多い場合や視力障害が著しい場合は追加処置が必要になることがあります。まずは経過を観察し、眼圧や出血範囲に問題があれば迅速に対応します。

    6-3. 眼圧上昇(術後高眼圧)

    • 【症状】
    • まぶたの痛み、頭痛、吐き気、視界のかすみなどが現れる場合があります。
    • 【原因】
    • 手術中の薬剤や炎症性物質が目の中に残り、一時的に眼圧が上がることがあります。
    • 【対処】

      重症の場合は点滴を行います。極めてまれですが、緊急手術が必要な場合もあります。通常は、点眼や内服薬で眼圧をコントロールします。通常は数日~数週間で落ち着きますが、緑内障がある方は注意が必要です。

    6-4. 視力改善が不十分・残存屈折誤差

    • 【症状】
    • 手術後に思ったほど視力が上がらない、または近見・遠見のピントが合わない。
    • 【原因】
    • 眼内レンズの度数選択時に微妙な誤差が出る場合や、過去に網膜疾患がある方は視力向上が限定的なことがあります。
    • 【対処】

      まずはメガネの度数調整で対応します。それでも改善が難しければ、二次的にレンズ交換が検討されることもありますが、状況に応じて慎重に判断します。

    7. 日常生活で気をつけるポイント

    術後の回復をスムーズにするために、普段の生活でも下記ポイントに気をつけましょう。

    7-1. 紫外線・まぶしさ対策

    • UVカットサングラス
    • 術後は瞳孔(ひとみ)が少し大きくなり、まぶしさを感じやすくなります。外出時はUVカット機能のあるサングラスやつば付きの帽子を活用しましょう。
    • 屋内照明
    • 明るい白色LEDライトよりも、暖色系のやわらかい照明を選ぶと、まぶしさがやわらぎ、目への負担が減ります。

    7-2. コンタクトレンズ・エクステンション

    • コンタクトレンズ
    • 術後1か月以内はコンタクトレンズの使用を控えます。医師の許可が出たら、ソフトレンズから慣らしていきましょう。
    • まつげエクステ・マスカラ

      術後1~2週間は目元に異物(のりやマツエクの接着剤など)をつけるのは避けた方が安全です。感染リスクを下げるため、メイクは控えめに。

    7-3. 飲酒・喫煙

    • 飲酒
    • 適量の飲酒は大きな問題になりにくいですが、術後1週間程度は控えるのが望ましいです。過度の飲酒は眼圧を上げる可能性があります。
    • 喫煙

      喫煙は血流を悪くし、術後の傷の治りを遅らせるリスクがあります。術後少なくとも1か月は禁煙をおすすめします。

    8. よくある質問(Q&A)

    Q1. 術後どれくらいで運転していいですか?

    A.
    術後の視力改善やまぶしさの程度には個人差があります。一般的には術後1~2週間程度で視力が落ち着く方が多いです。運転免許の更新や実際に運転を再開する前に、当院での視力検査・確認を受けてから判断してください。

    Q2. 術後に充血が続くのですが、大丈夫ですか?

    A.
    術後1~2週間程度は軽度の結膜下出血や充血が続くことがあります。多くは自然に消退しますが、もし1か月以上続いたり、充血と同時に目の痛み・視力低下を伴う場合は、早めにご相談ください。

    Q3. 白内障手術後に近くが見にくくなった気がするのですが?

    A.
    白内障手術では主に遠くのピントを合わせるように眼内レンズを選ぶことが多いため、近見(読書など)はメガネや老眼鏡が必要になることがあります。ご希望があれば多焦点眼内レンズや調節型レンズを検討するケースもありますが、術後に「遠くを見るクリア度」と「近くを見るピント」を、患者さんとご相談しながら最適なメガネ処方を行います。

    Q4. 後発白内障が起きたらどうすればいいですか?

    A.
    後発白内障は、術後数か月~数年後に起こることがあります。症状として「再び視界がかすむ」「まぶしく感じる」といった変化があれば、当院へ連絡のうえ受診してください。YAGレーザー後嚢切開術という簡単なレーザー処置で、視力がすぐに改善します。後発白内障の発症の原因・症状・治療について

    Q5. 手術後に目薬がなくなったらどうすればいいですか?

    A.
    当院から処方された点眼薬は、指定された期間中継続して使ってください。なくなりそうな時や不安がある場合は、処方日や使用状況をお知らせいただき、追加処方や中止のタイミングを判断しますのでご連絡ください。

    9. まとめ

    白内障手術後は、視力改善に向けて順調に回復していく時期です。ただし、術後1週間~1か月はいくつかの注意点を守り、定期的な検査を受けることが大切です。以下のポイントを参考に、無理なく快適な生活を取り戻しましょう。

      • 手術直後~翌日:眼帯装着、軽い痛みあり、安静
      • 術後1週間以内:激しい運動や目への刺激を避け、点眼薬を正しく使う
      • 術後1週間~1か月:定期検査で炎症や眼圧をチェック
      • 術後2か月以降:メガネ度数の調整。日常生活にほぼ支障なし。後発白内障の有無を確認しつつ、3月に1度の定期検査へ
    • 当院では、術後のケアやトラブル対応、メガネ処方まで丁寧にサポートいたします。万が一、術後の経過で気になることや不安があれば、いつでもご連絡ください。患者さま一人ひとりの目の健康を第一に考え、スタッフ一同サポートいたします。