抗生物質は、細菌感染症の治療に使われる薬で、多くの種類があり、それぞれ効果を発揮する細菌や適応疾患が異なります。以下に代表的な抗生物質の種類とその適応疾患を一覧で示します。更に詳しくお知りになりたい方は抗生物質の用法・用量についてまとめていますので合わせてご覧ください。
抗生物質の主な分類と適応疾患
分類(系統名) |
代表的な薬剤 |
主な適応疾患 |
特徴 |
ペニシリン系 |
アモキシシリン(AMPC)、アンピシリン |
咽頭炎、扁桃炎、中耳炎、肺炎、梅毒など |
古くから使われている。細胞壁合成阻害。 |
セフェム系 |
セフカペン ピボキシル、セフジトレン ピボキシル、セフメタゾール |
呼吸器感染症、尿路感染症、皮膚感染症など |
第1〜4世代まであり、広いスペクトラム。 |
マクロライド系 |
クラリスロマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシン |
マイコプラズマ肺炎、咽頭炎、百日咳、クラミジア感染症 |
細胞内寄生菌にも有効。ペニシリンアレルギーでも使用可。 |
ニューキノロン系 |
レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ガチフロキサシン |
尿路感染症、腸炎、呼吸器感染症、眼科感染症 |
幅広い抗菌スペクトラム。耐性菌が問題になることも。 |
テトラサイクリン系 |
ミノサイクリン、ドキシサイクリン |
ニキビ、クラミジア、リケッチア、肺炎、ピロリ菌除菌 |
小児・妊婦には原則禁忌(歯の着色や骨発育障害)。 |
アミノグリコシド系 |
ゲンタマイシン、アミカシン |
敗血症、重症感染症、結核補助薬 |
静注・点滴が主。腎毒性・耳毒性に注意。 |
カルバペネム系 |
メロペネム、イミペネム |
重篤な感染症、耐性菌感染症 |
非常に広範囲に作用。多剤耐性菌にも使用。 |
リンコマイシン系 |
クリンダマイシン |
歯科感染症、骨髄炎、扁桃周囲膿瘍など |
嫌気性菌にも有効。偽膜性大腸炎に注意。 |
グリコペプチド系 |
バンコマイシン、テイコプラニン |
MRSA感染症 |
重症感染症で使用。耳・腎毒性あり。 |
オキサゾリジノン系 |
リネゾリド |
MRSA、VREなどの耐性菌 |
新しい系統。経口も可能なMRSA治療薬。 |
特殊な抗生物質とその適応
分類 |
代表薬 |
適応疾患 |
特記事項 |
抗結核薬 |
イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール |
結核 |
併用療法が基本。耐性予防のため単剤使用不可。 |
抗らい薬 |
ダプソン、クロファジミン |
ハンセン病(らい病) |
特殊な抗菌薬。感染力は弱いが長期治療が必要。 |
抗マイコバクテリウム薬 |
クラリスロマイシン、エタンブトール |
非結核性抗酸菌症(MACなど) |
耐性菌対策として複数併用が一般的。 |
抗生物質使用時の注意点
-
- ウイルス感染(風邪、インフルエンザなど)には効果なし
- 耐性菌の出現を防ぐため、処方通りに最後まで飲み切ることが重要
- 副作用(下痢、発疹、アレルギー反応など)にも注意
- 妊婦・授乳中・小児では選択に注意が必要な薬も多い