ドライアイの治療薬

2025.08.06

1. ドライアイとは?

ドライアイとは、涙の量や質の異常により、眼の表面に障害を起こす慢性疾患です
症状は乾き、異物感、かすみ目、疲れ目、しみる感じなど様々です。

2. ドライアイの主な分類

分類

特徴

主な原因

涙液減少型 

涙の量が減る

加齢、シェーグレン症候群、薬剤性、神経障害

蒸発亢進型

涙がすぐ蒸発する

マイボーム腺機能不全、VDT作業、コンタクト装用 

混合型

上記2つの要因が合併 

加齢、環境、全身疾患など

3. 診断方法(検査)

検査名

内容

意義

シルマー試験

涙の量を測定(5分間)

10mm以下で減少型の可能性

BUT(破壊時間)

涙の安定性測定

5秒未満で不安定型(蒸発型)

フルオレセイン染色 

角膜の傷を可視化

重症度の判定に

リッドマージン観察

マイボーム腺の詰まり・炎症 

蒸発型ドライアイの診断に重要 

OSDIスコア

自覚症状を数値化

治療効果判定にも活用

4. 治療の基本戦略

 A. 薬物療法(目薬)

薬剤名

有効成分

特徴

ヒアレイン®

ヒアルロン酸Na

保湿・粘性で涙の安定化。基本薬。

ジクアス®

ジクアホソルNa

ムチン・水分分泌促進。涙の質を改善。

ムコスタ®

レバミピド

粘液層再建、抗炎症効果も。異物感あり。

ステロイド点眼薬

フルメトロン等

強い炎症時に短期使用。副作用に注意。

免疫抑制剤

シクロスポリン(未承認)等

慢性炎症型ドライアイの根本治療。保険適応外。

自家血清点眼

自分の血液を精製

成長因子を含み角膜治癒促進。重症例向け。

 B. 涙液の排出を抑える(涙点プラグ)

  • 涙点プラグ挿入:下涙点(または上下)を閉じて涙の排出を防ぎ、涙の滞留時間を延ばす。

      • シリコン製プラグ(非吸収性)
      • 吸収性プラグ(1~3か月で自然に吸収)

  • 副作用:異物感、プラグの脱落、涙嚢炎のリスクあり。

 C. マイボーム腺機能不全(MGD)への対処

  • 温罨法(あたため)+まぶたマッサージ
    • 脂が固まって詰まり、涙の蒸発が促進されている状態を改善。
  • まつ毛周囲の清拭(リッドハイジーン)
    • まつ毛ダニ対策としても重要。
  • IPL治療(光線治療)
    • MGD改善や炎症抑制に効果。保険適応外。

    • 最近ではLipiFlow®、E-Eye®などの機器が使用される。

5. 重症例へのアプローチ

方法

内容

自家血清点眼

自身の血液から抽出した血清を点眼液として使用。成長因子が上皮修復を促進。

眼瞼形成手術

兎眼・瞼裂拡大などの構造的異常がある場合に。

角膜保護用コンタクト 

潤いを保持し角膜を保護するためのハードまたはソフトCL

6. 生活指導(セルフケア)

指導項目

具体的内容

まばたき

意識してゆっくり、完全にまぶたを閉じること

作業環境 

加湿(40~60%)、エアコン風を避ける、VDT作業では20分ごとに休憩 

睡眠

目を閉じる時間をしっかり確保(涙の回復)

食事

ビタミンA、オメガ3脂肪酸(青魚、ナッツなど)を摂取

禁煙

喫煙は涙液分泌を抑制し、角膜上皮の回復も阻害

7. よくある質問(Q&A)

Q1. 一生治らないの?
→ 多くは慢性ですが、治療で症状のコントロールが可能です。

Q2. コンタクトはやめるべき?
→ 症状が強い間は中止または眼鏡併用が望ましいです。涙液保持型の特殊レンズを使うこともあります。

Q3. 涙が出るのにドライアイ?
→ 反射性分泌(防御反応)で涙が一時的に増えても、本質的にはドライアイの可能性があります。

8. 治療フロー(例)

  • 軽度:人工涙液 → 保湿型点眼薬 → 生活改善
  • 中等度:ジクアス/ムコスタ → 涙点プラグ → 温罨法/マイボーム腺ケア
  • 重度:抗炎症点眼/自家血清点眼 → コンタクト療法/手術

 

9. 最新の動向(2020年代〜)

新規薬剤(海外)

      • Lifitegrast(リフィテグラスト):LFA-1阻害薬、アメリカではFDA承認済
      • オメガ脂肪酸点眼:炎症抑制作用
  • 新治療デバイス

      • NIBUT測定装置(非侵襲的BUT)で精密診断
      • 人工知能による涙液解析など、今後の進展も注目されています

✅ まとめ

分野

ポイント

診断

症状+BUT・シルマー・染色が基本

治療

点眼+涙点プラグ+生活改善が中心

特殊治療 

自家血清点眼・IPL・形成手術も選択肢

継続管理

慢性疾患として定期的なチェックが重要