目次
1. ドライアイとは?
ドライアイとは、涙の量や質の異常により、眼の表面に障害を起こす慢性疾患です。
症状は乾き、異物感、かすみ目、疲れ目、しみる感じなど様々です。
2. ドライアイの主な分類
分類 |
特徴 |
主な原因 |
涙液減少型 |
涙の量が減る |
加齢、シェーグレン症候群、薬剤性、神経障害 |
蒸発亢進型 |
涙がすぐ蒸発する |
マイボーム腺機能不全、VDT作業、コンタクト装用 |
混合型 |
上記2つの要因が合併 |
加齢、環境、全身疾患など |
3. 診断方法(検査)
検査名 |
内容 |
意義 |
シルマー試験 |
涙の量を測定(5分間) |
10mm以下で減少型の可能性 |
BUT(破壊時間) |
涙の安定性測定 |
5秒未満で不安定型(蒸発型) |
フルオレセイン染色 |
角膜の傷を可視化 |
重症度の判定に |
リッドマージン観察 |
マイボーム腺の詰まり・炎症 |
蒸発型ドライアイの診断に重要 |
OSDIスコア |
自覚症状を数値化 |
治療効果判定にも活用 |
4. 治療の基本戦略
A. 薬物療法(目薬)
薬剤名 |
有効成分 |
特徴 |
ヒアルロン酸Na |
保湿・粘性で涙の安定化。基本薬。 |
|
ジクアス® |
ジクアホソルNa |
ムチン・水分分泌促進。涙の質を改善。 |
ムコスタ® |
レバミピド |
粘液層再建、抗炎症効果も。異物感あり。 |
ステロイド点眼薬 |
フルメトロン等 |
強い炎症時に短期使用。副作用に注意。 |
免疫抑制剤 |
シクロスポリン(未承認)等 |
慢性炎症型ドライアイの根本治療。保険適応外。 |
自家血清点眼 |
自分の血液を精製 |
成長因子を含み角膜治癒促進。重症例向け。 |
B. 涙液の排出を抑える(涙点プラグ)
- 涙点プラグ挿入:下涙点(または上下)を閉じて涙の排出を防ぎ、涙の滞留時間を延ばす。
-
- シリコン製プラグ(非吸収性)
- 吸収性プラグ(1~3か月で自然に吸収)
-
- 副作用:異物感、プラグの脱落、涙嚢炎のリスクあり。
C. マイボーム腺機能不全(MGD)への対処
-
温罨法(あたため)+まぶたマッサージ
- 脂が固まって詰まり、涙の蒸発が促進されている状態を改善。
- 脂が固まって詰まり、涙の蒸発が促進されている状態を改善。
-
まつ毛周囲の清拭(リッドハイジーン)
- まつ毛ダニ対策としても重要。
- まつ毛ダニ対策としても重要。
-
IPL治療(光線治療)
- MGD改善や炎症抑制に効果。保険適応外。
- 最近ではLipiFlow®、E-Eye®などの機器が使用される。
5. 重症例へのアプローチ
方法 |
内容 |
自家血清点眼 |
自身の血液から抽出した血清を点眼液として使用。成長因子が上皮修復を促進。 |
眼瞼形成手術 |
兎眼・瞼裂拡大などの構造的異常がある場合に。 |
角膜保護用コンタクト |
潤いを保持し角膜を保護するためのハードまたはソフトCL |
6. 生活指導(セルフケア)
指導項目 |
具体的内容 |
まばたき |
意識してゆっくり、完全にまぶたを閉じること |
作業環境 |
加湿(40~60%)、エアコン風を避ける、VDT作業では20分ごとに休憩 |
睡眠 |
目を閉じる時間をしっかり確保(涙の回復) |
食事 |
ビタミンA、オメガ3脂肪酸(青魚、ナッツなど)を摂取 |
禁煙 |
喫煙は涙液分泌を抑制し、角膜上皮の回復も阻害 |
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 一生治らないの?
→ 多くは慢性ですが、治療で症状のコントロールが可能です。
Q2. コンタクトはやめるべき?
→ 症状が強い間は中止または眼鏡併用が望ましいです。涙液保持型の特殊レンズを使うこともあります。
Q3. 涙が出るのにドライアイ?
→ 反射性分泌(防御反応)で涙が一時的に増えても、本質的にはドライアイの可能性があります。
8. 治療フロー(例)
- 軽度:人工涙液 → 保湿型点眼薬 → 生活改善
- 中等度:ジクアス/ムコスタ → 涙点プラグ → 温罨法/マイボーム腺ケア
- 重度:抗炎症点眼/自家血清点眼 → コンタクト療法/手術
9. 最新の動向(2020年代〜)
新規薬剤(海外):
-
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- Lifitegrast(リフィテグラスト):LFA-1阻害薬、アメリカではFDA承認済
- オメガ脂肪酸点眼:炎症抑制作用
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新治療デバイス:
-
- NIBUT測定装置(非侵襲的BUT)で精密診断
- 人工知能による涙液解析など、今後の進展も注目されています
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✅ まとめ
分野 |
ポイント |
診断 |
症状+BUT・シルマー・染色が基本 |
治療 |
点眼+涙点プラグ+生活改善が中心 |
特殊治療 |
自家血清点眼・IPL・形成手術も選択肢 |
継続管理 |
慢性疾患として定期的なチェックが重要 |