「ダビンチ手術(ロボット支援下手術)」などで行われる頭低位(とうていい)体位は、緑内障の患者さんにとって重要なリスク要因となります。特に長時間の手術では、一時的・時に永続的な視神経障害が報告されています。
以下で、緑内障と頭低位の関係について、医学的な観点と患者説明向けの両面からわかりやすく解説します。
ダビンチ手術と頭低位体位とは?
- ダビンチ手術では、骨盤や腹部の臓器(前立腺、子宮、直腸など)にアプローチする際、頭を低く、足を高くした「頭低位体位」がよく使われます。
- これにより臓器が重力で上に移動し、術野が広がりやすくなるというメリットがあります。
緑内障患者にとっての問題点
頭低位になると
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- 眼圧(IOP)が上昇
通常よりも 10〜20mmHg以上 上がることもあります。
特に手術時間が長い(3〜6時間以上)と、持続的な高眼圧が問題に。 - 視神経乳頭の虚血
高眼圧により、視神経が酸素不足(虚血)状態になります。
緑内障ではすでに視神経が弱っているため、さらにダメージを受けやすい。 - 視野障害の進行
術後に「視力が下がった」「視野が欠けた」と訴える例もあります。
- 眼圧(IOP)が上昇
文献・報告例(要約)
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- 術中眼圧は、頭低位で30〜40mmHgに達することも
- 特に緑内障患者や緑内障疑いのある人では、術後視野障害が悪化した症例あり
- 一部報告では「正常眼圧緑内障でも術後進行がみられた」
医師向けの対応
対応項目 |
内容 |
術前評価 |
緑内障の有無、眼圧、視神経乳頭の状態、視野検査 |
眼科との連携 |
手術前に眼科専門医と連携・リスク評価が望ましい |
手術中 |
頭低位時間の短縮、眼圧上昇のモニタリング(特に全身麻酔科医と連携) |
術後 |
眼圧と視機能の早期チェック(可能なら術後数日以内に眼科受診) |
患者さんへの説明例
「今回のロボット支援手術では、頭を下にする姿勢(頭低位)で数時間過ごしていただく必要があります。あなたは緑内障があるため、術中に目の圧力が上がりやすく、手術後に視力や視野の変化が起こる可能性があります。必要に応じて眼科と連携しながら、安全に手術を進めていきます。」
まとめ
項目 |
内容 |
リスク体位 |
ダビンチ手術などで用いられる「頭低位」 |
緑内障との関係 |
頭低位中に眼圧が上昇し、視神経にダメージ |
危険因子 |
長時間手術、視神経脆弱、正常眼圧緑内障 |
推奨対応 |
眼科と連携し、術前・術後の視機能チェックを行う |
実際の対応(現場向けチェックリスト)
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- 緑内障の診断があるか確認
- 術前に眼科受診を促す(視神経の評価)
- 頭低位時間をできる限り短く調整
- 術後の視機能変化を確認(眼科へフォロー)