緑内障とダビンチ手術時の頭低位

2025.09.09

ダビンチ手術(ロボット支援下手術)」などで行われる頭低位(とうていい)体位は、緑内障の患者さんにとって重要なリスク要因となります。特に長時間の手術では、一時的・時に永続的な視神経障害が報告されています。

以下で、緑内障と頭低位の関係について、医学的な観点と患者説明向けの両面からわかりやすく解説します。

ダビンチ手術と頭低位体位とは?

  • ダビンチ手術では、骨盤や腹部の臓器(前立腺、子宮、直腸など)にアプローチする際、頭を低く、足を高くした「頭低位体位」がよく使われます。

  • これにより臓器が重力で上に移動し、術野が広がりやすくなるというメリットがあります。

緑内障患者にとっての問題点

頭低位になると

    1. 眼圧(IOP)が上昇
      通常よりも 10〜20mmHg以上 上がることもあります。
      特に手術時間が長い(3〜6時間以上)と、持続的な高眼圧が問題に。
    2. 視神経乳頭の虚血
      高眼圧により、視神経が酸素不足(虚血)状態になります。
      緑内障ではすでに視神経が弱っているため、さらにダメージを受けやすい
    3. 視野障害の進行
      術後に「視力が下がった」「視野が欠けた」と訴える例もあります。


文献・報告例(要約)

    • 術中眼圧は、頭低位で30〜40mmHgに達することも
    • 特に緑内障患者や緑内障疑いのある人では、術後視野障害が悪化した症例あり
    • 一部報告では「正常眼圧緑内障でも術後進行がみられた

医師向けの対応

対応項目

内容

術前評価

緑内障の有無、眼圧、視神経乳頭の状態、視野検査

眼科との連携 

手術前に眼科専門医と連携・リスク評価が望ましい

手術中

頭低位時間の短縮、眼圧上昇のモニタリング(特に全身麻酔科医と連携) 

術後

眼圧と視機能の早期チェック(可能なら術後数日以内に眼科受診

患者さんへの説明例

「今回のロボット支援手術では、頭を下にする姿勢(頭低位)で数時間過ごしていただく必要があります。あなたは緑内障があるため、術中に目の圧力が上がりやすく、手術後に視力や視野の変化が起こる可能性があります。必要に応じて眼科と連携しながら、安全に手術を進めていきます。」

まとめ

項目

内容

リスク体位

ダビンチ手術などで用いられる「頭低位」

緑内障との関係 

頭低位中に眼圧が上昇し、視神経にダメージ

危険因子

長時間手術、視神経脆弱、正常眼圧緑内障

推奨対応

眼科と連携し、術前・術後の視機能チェックを行う 

実際の対応(現場向けチェックリスト)

    • 緑内障の診断があるか確認
    • 術前に眼科受診を促す(視神経の評価)
    • 頭低位時間をできる限り短く調整
    • 術後の視機能変化を確認(眼科へフォロー)