閉塞隅角緑内障とPAS

2025.09.09

閉塞隅角緑内障」と「PAS(Peripheral Anterior Synechia/周辺前癒着)」は、非常に密接に関係する概念です。
簡単にいえば

  • PASは、閉塞隅角緑内障が慢性化した結果、生じる“癒着”です。
  •  PASが進行すると、隅角は元に戻らず閉じたままになり、眼圧が下がらなくなります。

以下で、わかりやすく、眼科クリニックのHPや患者説明にも使える形で詳しく解説します。

閉塞隅角緑内障とは?

  • 房水(目の中の水)が排出される「隅角」が、虹彩(茶目)によって急にふさがれることで眼圧が急上昇するタイプの緑内障です。

  • 急性(発作型)・慢性(気づかないうちに進行)の2タイプがあります。

PAS(Peripheral Anterior Synechia)とは?

  • 虹彩と隅角がくっついて癒着してしまった状態です。

  • 通常、虹彩は隅角から離れた位置にありますが、閉塞状態が長く続くとくっついて戻らなくなるのです。

イメージで説明

正常隅角

一時的閉塞

PASによる癒着

隅角が広く、房水が流れる 

一時的に虹彩が隅角に接して閉塞(可逆的) 

虹彩が隅角に癒着し、房水が流れなくなる(不可逆的)

PASの何が問題?

    • 房水が排出できなくなり、慢性的な高眼圧に
    • 一度くっついた部分は元に戻らない
    • 点眼薬ではコントロールが難しくなることも
    • 最終的には手術が必要になる可能性が高くなる

PASはどんなときに起きる?

原因

内容

閉塞隅角緑内障の慢性化

閉塞が長引くと癒着が生じる

急性発作の放置

激しい眼圧上昇後、隅角が癒着する

不適切なレーザー後の炎症 

虹彩切開術後の炎症などでも起こることがある 

慢性の隅角狭窄

日々少しずつ癒着が広がることもある

PASの診断方法

    • 隅角鏡(ゴニオスコピー)で直接観察
    • OCT(前眼部OCT)で癒着の位置や範囲を確認
    • 通常、PASがどのくらいの度合いであるかを評価する(時計盤で例える:6時~9時方向など)

PASの治療・対応

状況

対応

PASが軽度で眼圧コントロール良好

点眼治療、定期観察

PASが広範囲(180度以上)・眼圧上昇 

外科的治療(白内障手術や隅角形成術、濾過手術)

急性閉塞後のPAS予防

早期のレーザー虹彩切開術(LI)が重要

まとめ

用語

内容

閉塞隅角緑内障

隅角が閉じ、眼圧が上昇する緑内障

PAS(周辺前癒着)

虹彩が隅角に癒着して、房水の流れが永続的に妨げられる

発生機序

閉塞状態が長引いた結果、組織が癒着する

問題点

点眼では効果が不十分に。手術が必要なことも

治療

早期対応(LI、白内障手術)と、進行時は外科的手術も検討 

患者さん向け説明例(クリニックで)

「あなたの目では、房水の通り道が一部ふさがって、虹彩と隅角がくっついてしまっています(PASといいます)。この状態になると、点眼だけでは十分に眼圧を下げにくくなるため、場合によっては手術が必要になることもあります。」

閉塞隅角緑内障の理解には狭隅角との違いも重要です。詳しくは狭隅角と閉塞隅角緑内障の違いをご覧ください