緑内障と麻酔薬による失明のリスク

2025.09.10

緑内障と麻酔薬による失明リスク」は、手術や処置の際に非常に重要なテーマです。
緑内障患者さんは、麻酔や手術の内容、麻酔薬の種類によっては眼圧が上がり視神経障害が悪化しやすく、最悪の場合は視力の喪失につながるリスクがあります。

以下に、わかりやすくポイントをまとめます。

1. 緑内障患者における麻酔のリスク

    • 緑内障は、すでに視神経が弱っている状態
    • 麻酔薬や麻酔中の生理変化で眼圧が急激に上昇した場合、視神経へのダメージが急速に進む恐れがある。
    • 特に閉塞隅角緑内障や狭隅角の患者でリスクが高い

2. 麻酔薬が眼圧に与える影響

麻酔薬の種類

眼圧への影響

説明

吸入麻酔薬(セボフルランイソフルランなど) 

軽度の眼圧上昇または変化なし

一般的には比較的安全

静脈麻酔薬(プロポフォールケタミン

ケタミンは眼圧上昇のリスクあり 

プロポフォールは眼圧低下傾向 

筋弛緩薬(スキサメトニウム

一過性の眼圧上昇

筋収縮による眼圧上昇が問題

気管挿管や咳嗽時

一時的に眼圧が大幅上昇

強い咳や嘔吐も危険因子

3. 麻酔中の生理的リスク

    • 体位変換(特に頭低位)による眼圧上昇
    • 呼吸状態の悪化による二酸化炭素増加(高二酸化炭素血症) → 血管拡張、眼圧上昇
    • 血圧の急変動も視神経に悪影響

4. 失明のリスクとなる状況

  • 術中視神経虚血(ischemic optic neuropathy)

    • 眼圧の急激上昇や血流障害により、視神経が壊死すること。
  • 閉塞隅角緑内障の急性発作

    • 麻酔薬や体位変化で隅角が閉塞し、眼圧急上昇。
  • 術後視力低下

    • 特に長時間の手術、頭低位手術で報告されている。

5. 対策と注意点

項目

対応策

術前評価

緑内障の有無、タイプ、眼圧コントロール状況を確認

麻酔薬の選択

ケタミンやスキサメトニウムは避けることが望ましい 

体位管理

頭低位の時間を最小限に

眼圧モニタリング 

可能な場合は術中・術後に眼圧をチェック

術後フォロー

早期に眼科診察を受け、視機能の変化を確認

6. 患者さんへの説明例

「緑内障の方は、麻酔や手術の際に目の中の圧力が上がりやすく、視力が悪化するリスクがあります。手術前に十分な検査を行い、麻酔方法や体位について配慮しますので、ご安心ください。」

7. まとめ

項目

ポイント

緑内障患者の麻酔リスク 

眼圧上昇による視神経障害悪化のリスクあり

麻酔薬の影響

ケタミンやスキサメトニウムは眼圧上昇に注意

体位の影響

頭低位など体位変化も眼圧に影響

対応

術前評価、麻酔選択、体位管理、術後フォローが重要