輻輳(ふくそう)とは?

2026.02.04

近くの物を見るときに、左右の目が内側(鼻側)へ同時に動いて、両目の視線を同じ1点に合わせる運動が「輻輳」です。

これがうまく働くことで、近方視でも “1つに見える(単一視)” を保てます。

近くを見るときのセット動作「近見反応(近見三徴)」

近くを見るとき、目はだいたい 3つを同時にやっています。

  • 輻輳(目を内側へ寄せる)
  • 調節(ピントを近くに合わせる=水晶体を厚くする)
  • 縮瞳(瞳孔を小さくする)

この3つが「近見反応(near reflex)」として連動して起こることが知られています。

ざっくり神経の流れ(イメージ)

目で見た情報(ぼけ・ズレ・奥行き感)をもとに、脳が「近くを見てるぞ」と判断

その結果として

  • 内直筋が働き(=輻輳)
  • 毛様体筋が働き(=調節)
  • 瞳孔括約筋が働く(=縮瞳)

…という“チームプレー”になります。

輻輳の4成分

臨床的に、輻輳(=vergence:両眼が反対方向に動く運動)は 複数の成分の足し算で説明されます。

Tonic(トニック)輻輳

刺激がなくても、筋トーンで決まる“基礎の寄り/開き”。

これと実際の両眼視要求のズレが 斜位(phoria) の土台になります。

Proximal(近位)輻輳

「近い物を見ている」という 距離感(奥行きの知覚)が引き起こす成分。大きめの視線移動でまず寄せる“粗調整”の役割があります。

Fusional(融像・disparity)輻輳

左右の網膜像のズレ(両眼視差)を手がかりに、細かく微調整して単一視を維持する成分。

Accommodative(調節性)輻輳

 ピント合わせ(調節)と連動して起こる輻輳。いわゆる AC/A(調節に対してどれくらい輻輳が出るか)と関係します。

眼科で「輻輳」をどう評価するか(代表的な検査)

1) 斜位・斜視(近見と遠見の差)

近見で外にずれる(外斜位/間歇性外斜視が増える)と、まず“輻輳が足りない系”を疑います。

典型例が 輻輳不全(Convergence Insufficiency: CI)で、近見の外斜位が遠見より≥4Δ大きい などが参考になります。

2) 近点輻輳(NPC:Near Point of Convergence)

近方目標を鼻に近づけて、いつ単一視が破綻するか(break)を見る検査。

目安として EyeWiki では、(老視前)鼻根から6cmより遠い(老視)10cmより遠いNPCは「遠い=不良」とされています。

※NPCは測り方やターゲットで変動しやすいので、“1回の値”より再現性や症状との一致が大事です。

3) 正の融像幅(PFV:Positive Fusional Vergence)

近見で Base-out prism を負荷して、どこまで融像で耐えられるかを見る(“寄せる力の持久力”)。

EyeWiki では 近見の正常が38Δ、遠見が14Δ、近見で 15〜20Δ未満はCIを示唆、といった目安が示されています。

輻輳の代表的な異常と症状

A) 輻輳不全(CI)

近方で輻輳が維持できないタイプ。

典型所見は

  • 近見で外斜位が大きい
  • NPCが遠い(receded)
  • PFVが低い
    で、症状として 眼精疲労、頭痛、近見の複視、文字が動く/行を見失うなどが出やすいとされます。

    B) 輻輳過多(Convergence Excess)

    寄りすぎるタイプ(近見で内斜位寄り)。

    “CIと逆方向”なので、同じ「疲れる」でもメカニズムが違い、対策も逆になりがちです(例:近用の度数設計や訓練の方向性)。

    C) 近見反応の痙攣(spasm of the near reflex)

    近見三徴(輻輳・調節・縮瞳)が 必要以上に出てしまう状態で、複視やぼやけ、頭痛の原因になります。

    (器質疾患の除外が前提で、機能性のケースもあります。)

    治療の考え方(“原因別に”がコツ)

    ここは一般論です。実臨床では屈折・調節・斜視、神経学的要素、ドライアイなどをまとめて評価して組み立てます。

    1) まず土台:屈折矯正・近業環境・眼表面

    • 適切な屈折矯正(遠視や不同視の扱い)
    • 近業距離、休憩、照明、姿勢
    • ドライアイや調節不全が絡むと症状が増幅するので、ここも整理

    2) CI(輻輳不全)の中心:視能訓練(Vergence/Accommodative therapy)

    3) プリズム眼鏡(補助)

    症状の強さや生活背景によっては、近用のベースインプリズムなどで“つらさを下げる”方向の補助を考えることがあります(根治ではなく、負担軽減の位置づけ)。

     

    輻輳がうまく働かない場合に関係する斜視については、下記動画、要注意!大人の斜視は病気の大きな病気の前兆!?斜視・斜位の違いや早期発見のメリットや視力の問題なども参考になります。