白内障手術は繊細な手術ですが、現在では手順が確立された治療であり、多くの方が受けている一般的な手術です。
それでも目の手術と聞くと、不安や疑問を感じる方も多いと思います。
では、白内障手術では、実際にどのようなことが行われているのでしょうか。
当院では30年以上の経験と8,000件以上の手術実績をもとに、最新の機材を用いた精度の高い手術を行っています。
この記事では、実際の手術映像をもとに白内障手術の工程を詳しくご紹介します。
白内障手術とは

白内障手術は「水晶体再建術」と呼ばれています。
「
水晶体再建術」とは
水晶体=目の中のレンズ
再建 =作り直す
「目の中のレンズを取り出して新しいレンズと入れ替えるという手術」です。
濁った水晶体は薬では元に戻らないため、視力を回復させるためには手術による治療が必要になります。
実際の白内障手術の流れ
白内障手術では、目の中で段階的な操作を重ねながら進めていきます。
麻酔が効いているため、手術中の痛みはほとんどありません。
基本的な流れは次のとおりです。
-
- 目に小さな入口を作る
- 水晶体の袋を開いて分離する
- 濁った水晶体を砕いて取り除く
- 人工レンズを挿入する
- 眼内の状態を整えて終了
ここでは、実際の手術動画の映像をもとに工程を順に解説します。
1.目に小さな入口を作る
白内障手術は、まず眼内レンズを入れる「入口」を作るところから始まります。
薬剤を入れるための隙間を2か所作る

小さな隙間を作り、薬剤を注入する準備を行います。
この隙間から粘弾性物質を注入します。
粘弾性物質を注入する

粘弾性物質というゼリー状の薬剤を入れることで、目の中をやさしく膨らませます。
内部の空間を確保し、次の工程を安全に行うための準備です。
約2.4〜2.7mmの切開を行う

人工レンズを挿入するためのメインの切開です。
この数ミリの入口から、すべての操作が行われます。
2.水晶体の袋を開いて分離する
水晶体は「嚢(のう)」という薄い膜に包まれています。
この膜の中身だけを取り出すための準備を行います。
前嚢(ぜんのう)を円形に切り取る

水晶体前面の薄い膜を円形に切開します。
この膜を連続的でなめらかな円形に切り取ります。これを前嚢切開(CCC)といいます。
円形を保つことで、後の工程で裂け目が入りにくくなり、人工レンズの安定性にもつながります。
この工程が白内障手術の重要なポイントとなります。
【POINT!】
サランラップを丸く切り剝ぐようなイメージです。
水を流して袋と中身を分離する

前嚢を開いた後、水を流し込みます。
水晶体の中身と袋の間に水を通し、やさしく分離させます。
【POINT!】
この工程は「卵」にたとえると理解しやすくなります。
薄い膜は卵の殻。
まず殻を上から丸くくり抜くイメージです。
真ん中の硬い黄身が核、周囲の白身が皮質。
殻を残したまま中身だけを取り出す準備をしています。
殻をきれいな円形に整えることが、安全な手術の土台になります。
3.濁った水晶体を砕いて取り除く
袋の準備が整ったら、いよいよ濁った水晶体そのものを除去します。
現在の白内障手術では、水晶体をそのまま取り出すのではなく、細かく砕いてから吸引します。
核を分割し砕く

水晶体の中心部は「核」と呼ばれます。若い頃は柔らかい状態ですが、加齢により硬くなります。
まず超音波装置を用いて、この核を半分に分割します。その後、さらに細かく砕いていきます。
【POINT!】
核のはがれが悪い場合には「ハイドロダイセクション」を行います。
ハイドロ=水、ダイセクション=分離する、という意味です。
水を流して袋と核の間をもう一度分離し、取り出しやすい状態に整えます。
無理に引き出すのではなく、構造を整えてから安全に除去します。
砕きながら吸引する

使用する装置は、濁った水晶体を砕くだけでなく、吸引する機能も備えています。
超音波で細かく砕きながら、同時に吸い出して少しずつ取り除いていきます。
吸引の状態を確認しながら、必要に応じて調整しつつ進めていくのが特徴です。
小さな切開から水晶体を除去できるのは、砕きながら吸引するこの技術があるためです。
【POINT!】
以前は水晶体を丸ごと取り出すために大きく切開していましたが、現在は小さな入口からすべての操作が行える手術方法が確立されています。
皮質を丁寧に取り除く

核を取り除いた後は、周囲に残った皮質を除去します。
ここでは超音波ではなく、よりやさしいチップを使用します。
【POINT!】
後嚢という薄い膜は、人工レンズを固定するための大切な構造のため必ず残さなければなりません。
後嚢を傷つけないよう、特に慎重に進めます。この工程は、手術の中でも特に神経を使う場面です。
4.眼内レンズを挿入する
濁った水晶体をすべて取り除くと、袋だけが残ります。その袋の中に人工の眼内レンズを挿入します。
折りたたんだレンズを挿入する

折りたたんだ状態のレンズを挿入します。小さな切開創から入るよう設計されているため、創口を大きく広げる必要はありません。
袋の中で「傘」のように広がる

挿入されたレンズは、袋の中でゆっくりと開いていきます。たたまれていたレンズが自然に広がり、後嚢の中で安定します。
位置を微調整し、正しい中心に固定されていることを確認します。
【POINT!】
レンズは袋の中で「傘のように開く」構造になっています。
小さな切開から入れても内部でしっかり広がり固定されます。
きれいに残された後嚢があるからこそ、安定した固定が可能になります。
5.眼内の状態を整えて手術終了
最後に粘弾性物質を取り除き、眼内の状態を整えます。

手術中に使用した粘弾性物質を吸引し、眼内から取り除きます。
粘弾性物質は、角膜内皮や眼内組織を保護するための材料です。
役目を終えた後は、眼圧が上がらないよう丁寧に除去します。
【POINT!】
粘弾性物質は、手術中の「クッション」の役割を担います。
昔は鶏のトサカから抽出していた時代もありました。
現在は「リコンビナント」と呼ばれる、極潤などにも使われるヒアルロン酸が主成分です。
切開は非常に小さいため自然に閉じる構造となっており、多くの場合縫合は不要です。
これで白内障手術は終了します。
手術時間について
白内障手術にかかる時間は、通常5分~10分前後で終了します。
当院では、短時間で正確に行うことを大切にしています。
創口が開いている時間が長くなるほど感染リスクは高まるため、無駄のない手順ですみやかに完結させることを基本方針としています。
麻酔は点眼で行う局所麻酔
当院の白内障手術では、点眼による局所麻酔で行われます。
麻酔が効いているため痛みはほとんどなく、意識はある状態で手術が進みます。
全身麻酔が必要になるのは、
などの特殊なケースに限られます。
しかし、中には「できれば眠っている間に終わらせたい」と不安を感じる方もいらっしゃいます。
そのような場合には、笑気麻酔を併用し手術を行うことも可能ですので、ご希望や不安があればお気軽にご相談ください。
【POINT!】
麻酔の方法は時代とともに変わってきました。かつては目の周囲に注射を行う麻酔が主流でしたが、その後、「テノン嚢下麻酔」という目の後ろに麻酔薬を入れる方法へと移行しました。
現在は手術技術の進歩により、点眼麻酔だけで行えるケースがほとんどです。
負担を減らしながら、安全性を高めてきた歴史があります。
片眼ずつ手術を行う理由
当院では、原則として片眼ずつ手術を行っています。通常は1週間ほど間隔をあけて、反対側の手術へ進みます。
このように片眼ずつ手術を行うのは、感染対策を重視しているためです。万が一術後に感染症が起こった場合、両眼を同日に手術していると両方に影響が及ぶ可能性があります。片眼ずつであれば、そのリスクを最小限に抑えることができます。
近年では両眼同日手術を行う施設もあり、通院回数が減るという利点もあります。しかし当院では、感染リスクを最優先に考え、片眼ずつの手術を基本としています。
まとめ
白内障手術は、工程が確立された安全性の高い手術です。
小さな切開から水晶体を取り除き、人工レンズを挿入する。その一つひとつを丁寧に行うことで、安全性が保たれます。
当院では、無駄のない流れで短時間に完結させることを大切にしています。
これから手術を受けられる方にとって、少しでも安心につながれば幸いです。
白内障手術の症状・治療方法・手術の流れを総合的に知りたい方は、▶白内障解説記事も参考にしてください。
白内障手術の当日の流れや、来院からお帰りまでの過ごし方については、「日帰り白内障手術の1日の流れ」の記事で詳しく解説しています。
この記事は、下記動画【日帰り白内障手術の1日】来院→手術→お帰りまでを密着しました!の内容をもとに、手術の流れを文章でもわかりやすく整理した解説記事です。動画とあわせてご覧いただくことでより理解しやすくなります。