白内障治療における薬草、薬剤、サプリメントの進展は古代から現代に至るまで多岐に渡り、様々なアプローチが取られてきました。
以下では、古代の薬草と伝統的治療法、近代の薬剤治療、サプリメントによる治療に加え、抗酸化、抗炎症、紫外線によるダメージ、加齢に対抗するレスベラトール、さらに不飽和脂肪酸であるEPA、DHAの影響を詳しく解説します。
一言でいうと白内障は眼の老化現象なので、アンチエイジングに効果があると考えられる薬剤などとほとんど同じといっても差し支えありません。
1.古代の薬草と伝統的治療法
白内障の治療は古代から行われており、薬草や民間療法が重要な役割を果たしてきました。エジプト、ギリシャ、インドなどの古代文化では、視力を保つための薬草や自然療法が使用されていました。これらの治療法は現代の科学的アプローチとは異なり、感覚や経験に基づいたものでしたが、薬草の抗酸化作用や抗炎症作用が目の健康を支えるために活用されていました。経験的治療ですが、現代ではその効果が確かめられているものもあります。
使用された薬草例
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- アロエ: アロエのジュースやエキスは、目の炎症を和らげ、視力の回復をサポートするために使われていました。
- カモミール: リラックス効果があり、目の疲れや炎症を緩和するために使われることがありました。
- ターメリック(ウコン): 強力な抗酸化作用を持つクルクミンが含まれており、古代では白内障の予防として利用されていました。
これらの薬草は、当時の人々にとって目の健康を守るための貴重な資源でした。
現代医学の発展により、これらの成分が持つ効果はある程度証明されていますが、科学的根拠が当時は欠けていました。
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2.近代の薬剤治療
近代に入ると、白内障の進行を遅らせるための薬剤が研究され、抗酸化物質の効果に注目されるようになりました。
白内障の原因の一つとして酸化ストレスが指摘されており、これに対抗する薬剤が開発されました。薬剤は白内障の進行を遅らせるための補助的な手段として使用されており、手術が主な治療法となる前の選択肢として重要でした。
代表的な薬剤例
- グルタチオン製剤
グルタチオンは細胞内で活性酸素を除去する強力な抗酸化物質であり、白内障の進行を遅らせるために使用される薬剤として注目されています。特に点眼薬として用いられます。
・カタリン点眼薬: グルタチオンを含み、白内障の進行を抑える効果が期待されています。進行初期に使用すると、効果が得られることがありますが、白内障を完全に治療することはありません。 - ビタミンC
ビタミンC(アスコルビン酸)は強力な抗酸化物質として、細胞内での酸化ストレスを減らす働きがあり、白内障の予防や進行抑制に役立つとされています。眼球の中でも、ビタミンCは特に水晶体に高濃度で存在し、白内障の予防に重要な役割を果たしています。
・ビタミンCの目薬がない理由
酸性である: ビタミンCは酸性が強く、目に刺激を与える可能性がある。
酸化しやすい: ビタミンCは空気に触れると効果がなくなりやすい。
低濃度では効果が得られにくい: 目薬として使うにはビタミンCの濃度が低すぎて、効果が得られにくい。
・ビタミンCサプリメント(錠剤・カプセル・粉末)市販のビタミンCサプリメントを飲むことで、手軽にビタミンCを補えます。1日1回で済むので便利です。 - ビタミンE
ビタミンEは脂質の酸化を防ぐため、目の細胞の保護に重要で、抗酸化作用を通じて白内障の進行を遅らせる役割があります。
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3.サプリメントによる治療
近年では、サプリメントが白内障の進行を遅らせるために注目されています。これらのサプリメントは、抗酸化作用や目の健康をサポートする成分を含んでおり、日常的に摂取することで予防や進行抑制に役立つとされています。
代表的なサプリメント成分
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- ルテイン ルテインは網膜に多く存在し、紫外線や光から目を守る重要なカロテノイドです。特に白内障の進行を抑える効果が期待されています。
- アイケアルテイン: ルテインを高濃度で含むサプリメントで、目の健康をサポートします。例)ルテインアイケア
- アスタキサンチン 強力な抗酸化作用を持ち、紫外線による目のダメージを軽減し、白内障の進行を抑える効果が期待されています。アスタキサンチンは、サケ、エビ、カニなどに含まれ、鮮やかな赤色をしています。最近では、紫外線による肌ダメージの予防としても利用されています。
・アスタリール®: 富士化学工業が提供するヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチン原料のブランド名です。 - ルテイン+アスタキサンチン配合サプリ: 2つの成分を配合することで、抗酸化作用を強化し、視力の健康を保つために利用されます。 例)めにサプリ アスタキサンチン+ルテイン
- ブルーベリー(アントシアニン) アントシアニンは強力な抗酸化作用を持ち、目の疲れを和らげ、視力の健康を保つために利用されます。
- ブルーベリーエキスサプリメント: ブルーベリーやカシスなどは高濃度のアントシアニンを含み、目の健康をサポートします。 例)ブルーベリーエキス
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4.抗酸化・抗炎症作用の重要性
白内障の進行には、酸化ストレスと炎症が大きく関与しているとされています。酸化ストレスは、目のレンズにダメージを与える原因となり、炎症もまた白内障の発症リスクを高めます。これらの影響を軽減する抗酸化作用や抗炎症作用を持つ成分が注目されています。
抗酸化物質の役割
抗酸化物質は、細胞を傷つける活性酸素を中和する役割があります。これにより、目のレンズにおける酸化によるダメージを防ぎ、白内障の進行をゆるやかにすることができます。
抗炎症作用の重要性
炎症も白内障の進行に深く関わっており、慢性的な炎症は白内障を悪化させる原因となります。抗炎症作用を持つ成分は、目の健康を守り、白内障のリスクを軽減します。
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5.紫外線の毒性と予防
紫外線は目に有害な影響を与え、白内障の発症を引き起こす原因の一つです。長期間にわたって紫外線にさらされることにより、目のレンズに酸化的なダメージを与え、白内障を促進します。紫外線のダメージを軽減するために、UVカットサングラスを使用することが推奨されています。
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6.レスベラトール仮説と抗加齢効果
レスベラトールは赤ワインに含まれるポリフェノールの、抗酸化作用や抗炎症作用が注目されています。これにより、加齢に伴う細胞の老化や白内障の進行を抑制する可能性が示唆されています。
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7.不飽和脂肪酸(EPA、DHA)の役割
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は、オメガ-3脂肪酸であり、抗炎症作用を持ちます。これらは目の健康にとって重要であり、特に白内障の予防に効果的です。これらの脂肪酸は炎症を軽減し、目の細胞を保護するために役立ちます。
8.加齢以外の白内障を発症する原因に対する治療
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- 糖尿病の治療
- 紫外線・放射線に対し、サングラス等による遮蔽
- 喫煙を減らす
- ステロイド薬の副作用
- 遺伝的背景の調査
まとめ
白内障の治療における薬草や薬剤、サプリメントの利用は、古代から現代に至るまで様々な形で行われてきました。
抗酸化作用、抗炎症作用、紫外線対策、加齢に対するレスベラトール仮説、さらには不飽和脂肪酸(EPA、DHA)の役割が、白内障の進行を遅らせるために注目されています。
点眼薬や内服薬、サプリメントの効果は限定的ではあるものの、それでも白内障の進行を遅らせる効果はあります。
手術の時期を先延ばししたい方には、多くの選択肢がありますが、これらの治療は個人差もありますので、定期的な眼科検査とセットで行うとよいでしょう。視力の回復のための治療は手術ですが、薬剤やサプリメントは予防や進行の遅延において引き続き重要な役割を果たしています。