白内障は「加齢」が主な原因と思われがちですが、実は紫外線や生活習慣、持病など、様々な要因が複雑に関わって発症・進行します。
1.年齢・体質(ベースリスク)
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加齢
最も大きな因子。
水晶体タンパク質の酸化・糖化が進み、透明性が落ちます。
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- 40代から微細変化、50–60代で自覚増、70代以降で日常生活に影響する人が増加。
家族歴
- 親やきょうだいが早期に白内障→本人も早期発症しやすい傾向。
体質・眼の形
2.光・放射線・外傷(環境因子)
紫外線(特にUV-B)
屋外活動・高照度環境が長い人(農業、漁業、建設、スキー・マリンスポーツ愛好家など)は皮質白内障が増えます。
→ サングラス・つば広帽子・偏光レンズでカットを。
強光暴露
- 溶接光、ステージ照明、手術灯などを裸眼で浴びる機会が多い人。
電離放射線・放射線治療歴
- 後嚢下白内障(PSC)になりやすい。
眼外傷
- 打撲・穿孔・異物の既往でロゼット(花びら状)など特徴的な白内障が出ることあり。
3.全身疾患
糖尿病
血糖変動で水晶体が浮腫→混濁しやすい。
- 若年でも後嚢下型や“スノーフレーク”様が出ることあり。良好な血糖管理でリスク低減。
アトピー性皮膚炎
若年〜壮年でも前嚢下や後嚢下の混濁が出やすい。
こすり癖・慢性炎症も関与。
ぶどう膜炎・眼内炎
炎症性サイトカインで後嚢下型が進みやすい。
副甲状腺機能異常・低カルシウム血症
- まれだが白内障の原因に。
高血圧・脂質異常・喫煙関連疾患
- 酸化ストレスを介して核硬化に関与。
4.薬剤(※“長期・高用量・累積曝露”が鍵)
ステロイド
内服・吸入・外用(皮膚)・注射・眼軟膏/点眼の総量が多いほど後嚢下白内障を起こしやすい。
→ やむを得ず使う場合は最小量・最短期間+定期眼科チェック。
フェノチアジン系(クロルプロマジンなど)
長期で前嚢部の変化・色素沈着様。
放射線治療関連薬・全身化学療法の一部
治療計画時に眼科フォローが推奨。
その他
局所/全身の長期ミオピン(強ミオチック)やアミオダロンは主に角膜混濁(渦状角膜)で、白内障そのものは典型ではありません(区別ポイント)。
5.生活習慣
喫煙
酸化ストレスで核硬化型のリスク上昇。禁煙で将来リスクを減らせる。
栄養の偏り
ビタミンC/E、ルテイン、ゼアキサンチンなど抗酸化栄養の不足は不利。
睡眠不足・慢性ストレス
直接の因果は限定的だが、抗酸化防御の低下や生活習慣の乱れを介して進行しやすい土台を作る。
長時間の画面
スマホのブルーライトは直接の原因とは未確立。
ただし乾燥・疲れ目で見えにくさを増やし、受診のタイミングを遅らせがち。
どの“型”になりやすいか(原因とタイプの対応)
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原因 |
なりやすい白内障の型 |
ヒント/備考 |
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加齢 |
核硬化・皮質 |
中心部が黄褐色→コントラスト低下、昼より夜見えにくい |
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紫外線・屋外労働 |
皮質 |
辺縁から“ギザギザ”状に白く進行 |
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ステロイド |
後嚢下(PSC) |
まぶしさ・逆光で極端に見えにくい;比較的進行が早い |
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糖尿病 |
後嚢下/皮質(若年は“スノーフレーク”) |
血糖コントロールで悪化ペースを抑制 |
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アトピー |
前嚢下/後嚢下 |
若年でもあり得る;こする癖は厳禁 |
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ぶどう膜炎 |
後嚢下 |
炎症コントロールが最優先 |
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外傷 |
ロゼット等 |
受傷後しばらくして発覚することも |
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放射線 |
後嚢下 |
眼科での長期フォローが安全 |
年齢層ごとの“出やすい背景”
- 〜40代
基礎疾患(アトピー、糖尿病、ぶどう膜炎)、外傷、ステロイド関連が中心。 - 50–60代
加齢変化の自覚が出る時期。喫煙歴・強い紫外線歴があると早め。 - 70代〜
加齢が主。核硬化+皮質の混合が増える。眩しさ・夜間運転の困難が顕著。
職業・趣味など具体例
- 高リスク寄り
農漁業、建設業、溶接、登山・トレイル、セーリング・サーフィン、スキー・スノボ指導、南国在住で屋外長時間。 - 配慮が必要
舞台照明・撮影現場、スポーツ審判(屋外)、長距離ドライバー。
→ UVカット眼鏡/サングラス(UV400)、偏光レンズ、つば広帽子、防護面の活用で実効リスクを下げられます。
予防・悪化予防の“優先度順アクション”
- 紫外線対策
UV400サングラス+帽子(晴・曇・雪面/水面反射も)。 - 禁煙
開始が早いほど将来の核硬化リスクを下げられる。 - 全身管理
糖尿病・アトピー・ぶどう膜炎の主治医と連携。 - ステロイドは適正使用
自己判断での長期連用は避け、最小量・最短期間+眼科定期チェック。 - 目の保護
作業・スポーツ時の保護眼鏡、外傷予防。 - 栄養・生活
バランス食+果物/緑黄色野菜(ビタミンC/E、ルテイン/ゼアキサンチン)、適度な運動、十分な睡眠。 - 定期検診
50代から年1回を目安にスリット検査・視力/コントラスト/まぶしさ評価。
セルフチェック(YESが多いほど要注意)
- 屋外での仕事・趣味が多い/サングラスはほぼ使わない
- 喫煙中または長い喫煙歴
- 糖尿病・アトピー・ぶどう膜炎・強度近視がある
- ステロイド薬を数ヶ月〜年単位で使ったことがある(吸入・皮膚外用含む)
- 眼外傷の既往がある/溶接や強光を扱う
- 最近、逆光や夜間で極端に見えにくい、まぶしさが強い
- 片目ずつ見ると、かすみ・二重/三重視がある
2つ以上当てはまるなら一度眼科で検査を。手術が不要でも、サングラスや生活調整で進み方を緩やかにできます。
よくある誤解の整理
スマホのブルーライト=白内障の直接原因 → 未確立。
老眼鏡をかけると白内障が進む → 進みません(老眼は水晶体の調節力の低下で別問題)
サプリで白内障が治る → 治療は手術のみ。ただし栄養は“進みにくい体づくり”の一助。






















