白内障の原因はストレスですか?

白内障とストレスの関係を分子生物学的・生理学的に整理しつつ、抗酸化・抗加齢栄養素との関係も詳しく解説します。

1. 白内障発症の基本メカニズム

白内障は、水晶体の主成分であるクリスタリン(α-, β-, γ-crystallin)が変性・凝集し、光を透過できなくなることによって起こります。

主な分子レベルの原因は、

  • 酸化ストレス(oxidative stress)
  • 糖化(glycation)
  • カルシウム代謝異常
  • 蛋白質分解酵素系の機能低下(ユビキチンプロテアソーム系の低下)

これらは互いに影響し合いながら、水晶体線維細胞内の透明性維持機構を破壊します。

2. ストレスが白内障に与える理論的影響

活性酸素(ROS)の過剰産生

心理的ストレス → 交感神経優位 → コルチゾール・アドレナリン上昇 →ミトコンドリアからのROS(Reactive Oxygen Species)発生が増加。

ROS(スーパーオキシドヒドロキシルラジカルなど)は水晶体内の硫黄結合を酸化し、クリスタリンのSH基が酸化 → ジスルフィド結合形成 → 濁りが発生します。

抗酸化酵素の防御低下

ストレス状態では、以下のような細胞内抗酸化酵素の発現が低下します。

特に水晶体ではグルタチオン(GSH)が重要で、これが減少すると酸化型GSSGが蓄積し、水晶体タンパクの変性が進行します。

コルチゾールの慢性上昇(擬似ステロイド白内障)

ストレスにより副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が慢性的に上昇すると、ステロイド薬投与時と同様に、

  • 水晶体上皮細胞の代謝抑制
  • Na⁺/K⁺ポンプ機能低下 → 浸透圧変化
  • アポトーシス促進

これらが「後嚢下白内障(PSC)」様の変化を誘発する可能性があります。

3. ストレス・自律神経・血流

自律神経失調により毛様体・虹彩の血流が低下し、酸素供給の少ない水晶体ではさらに代謝が滞ります。

水晶体は無血管組織のため、房水からの拡散に頼るしかなく、血流低下は即ち代謝異常 → 酸化ストレス蓄積を意味します。

4. 抗酸化・抗加齢ビタミン・サプリメントの理論的根拠

成分

主な作用機序

白内障・酸化ストレスへの効果

ビタミンC(アスコルビン酸)

水溶性抗酸化物質。GSH再生にも寄与。

水晶体中濃度が高く、酸化防御の中心。加齢で減少。摂取によりリスク低下。

ビタミンE(α-トコフェロール)

脂質膜の過酸化防止。

水晶体細胞膜の脂質酸化を防ぎ、脂溶性抗酸化バリアを維持。

ルテイン・ゼアキサンチン

カロテノイド。短波長光(ブルーライト)吸収・抗酸化。

黄斑だけでなく水晶体にも沈着し、光酸化障害を軽減。

アスタキサンチン

ミトコンドリア内抗酸化。

活性酸素除去能力が高く、動物実験で白内障抑制効果。

N-アセチルシステイン(NAC)

グルタチオン前駆体。

水晶体GSH濃度を上げ、酸化防御を強化。

α-リポ酸

水溶性+脂溶性の両性抗酸化物質。

ビタミンC/Eの再生・糖化防止作用。糖尿病性白内障予防に有効。

カルノシン(N-acetyl carnosine)

抗糖化・抗酸化。点眼薬としても研究。

クリスタリンの糖化防止。AGEs形成を抑制。

CoQ10(ユビキノン)

ミトコンドリア電子伝達系の抗酸化。

細胞エネルギー維持・酸化抑制。角膜や網膜への酸化防御でも注目。

セレン亜鉛

抗酸化酵素の補因子。

GPx(セレン)やSOD(亜鉛・銅)の活性維持に必須。

5. 抗酸化防御を高める生活習慣

  • 紫外線防御:UV400サングラス・帽子必須。
  • 睡眠:メラトニンは強力な抗酸化物質で、夜間修復に重要。
  • 禁煙:喫煙により水晶体GSHが急減。
  • ストレス緩和:副交感神経優位(深呼吸・瞑想・ウォーキング)で血流改善。
  • 低GI食:高血糖・糖化防止。AGEs蓄積を抑える。
  • 抗酸化サプリ併用:ビタミンC+E+ルテイン+アスタキサンチンなどの併用で相乗効果。

6. まとめ

要因

白内障への影響

対策

加齢

抗酸化力低下

抗酸化サプリ・紫外線防御

紫外線

光酸化ストレス

UVカット

糖化

AGEs形成

低GI食・αリポ酸・カルノシン

ストレス 

ROS増加・血流低下・ホルモン変動 

ストレスマネジメント+抗酸化物質摂取 

栄養不足

抗酸化防御低下

ビタミンC/E・ルテイン・CoQ10補給

ストレスは白内障の直接的な原因ではないが、「酸化」「糖化」「ホルモン変動」「血流低下」を通じて、白内障を早める重要な“促進因子”です。

そのため、ストレス対策+抗酸化・抗糖化栄養管理が、白内障の予防医学的アプローチとして極めて有用です。

 

ストレスによる酸化や糖化を抑えるためには、日常生活での対策が非常に重要です。

白内障の進行を遅らせる具体的な方法については、白内障を悪化させない方法はありますか?で詳しく解説しています。

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