まず前提として、白内障そのものは「可逆的(治せる)な失明原因」です。
ただし、放置して重症化すると、合併症で「不可逆的な失明」に進む場合があります。
白内障の進行段階と見え方の変化
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段階 |
病態 |
見え方の特徴 |
光の通り方 |
治療の可否 |
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初期 |
水晶体のタンパク質がわずかに変性・濁り始める |
「かすむ」「にじむ」「まぶしい」 |
光はまだ通る |
点眼で進行抑制は可、手術不要 |
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中期(未熟白内障) |
濁りが中央まで広がる |
視力0.3~0.1程度。新聞やテレビが見づらい |
光が散乱し、像がぼやける |
手術で回復可能 |
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末期(成熟白内障) |
水晶体全体が白く濁る |
明暗しか分からない。顔も見分けられない |
光がほとんど届かない |
手術で視力回復可能(ただし難易度上昇) |
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過熟白内障 |
水晶体の中心が液化・破裂しかけ |
見えない+痛い(炎症・眼圧上昇) |
光も通らず炎症性混濁 |
手術が困難・緊急性あり |
白内障が進むと起こる「見えない」感覚の実際
- 視界が灰色または乳白色に
全体にスモークがかかったように見える
明るい場所では逆にまぶしすぎて、何も見えなくなる(「白い霧の中」状態)。 - 視力検査では「手動弁」や「光覚弁」レベル
手を振っているのがわかる(手動弁)か、明るい・暗いだけがわかる(光覚弁)かの違い。 - 日常生活の支障
料理・読書・テレビはもちろん、歩行も危険。
明暗すら分かりにくくなると、夜間の外出は完全に不可能。
なぜ失明状態になるのか(病理の仕組み)
白内障は、眼の中の「レンズ=水晶体」が変性して濁る病気です。
1. 光が網膜に届かなくなる
- 網膜はカメラでいうフィルムのような部分。
- 濁ったレンズで光が散乱・吸収され、網膜に明瞭な像が結ばれない。
→ 結果として「見えない」。
2. 水晶体が膨張することで眼圧上昇
- 成熟~過熟の段階では、水晶体の含水量が増えて膨張。
- 虹彩(茶目)を前方に押して隅角(排水口)をふさぐ。
→ 急性緑内障発作を起こすことがある(痛み・頭痛・失明リスク)。
3. 水晶体が崩壊し、炎症を起こす
- 水晶体の内容物が袋(嚢)から漏れると、免疫反応でぶどう膜炎・続発緑内障を発症。
- 眼圧が急上昇し、視神経が不可逆的にダメージを受ける。
→ この段階になると手術しても視力が戻らない可能性がある。
失明に至る2つのタイプ
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種類 |
原因 |
回復の可能性 |
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可逆的失明 |
水晶体の濁りで光が通らない(単純白内障) |
✅ 手術で回復可 |
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不可逆的失明 |
合併症(緑内障・炎症・網膜障害)による視神経損傷 |
❌ 回復困難 |
特に危険な合併症
過熟白内障(かじゅくはくないしょう)
- 水晶体のタンパクが分解して液状化。
- 内容物が漏れ出し、強い炎症(続発性ぶどう膜炎)。
- 放置で続発緑内障 → 網膜障害 → 永久失明。
急性閉塞隅角緑内障
- 濁った水晶体が膨らみ、隅角が閉じる。
- 眼圧が60mmHg以上になることも。
- 数時間で視神経が障害されることがあり、緊急手術レベルの失明リスク。
医学的に「失明」とされる基準(日本の定義)
日本の身体障害者福祉法では次のいずれかを満たすと「失明」とみなされます。
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条件 |
内容 |
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視力基準 |
矯正視力が 0.02以下(両眼またはいずれか) |
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視野基準 |
視野が 10度以下 |
白内障が進行すれば、この基準を満たす状態に至ることもあります。
治療と回復の見込み
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状況 |
手術の効果 |
注意点 |
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成熟白内障 |
手術で良好に回復(視力0.8〜1.0も可) |
手術中の合併症リスク少し高い |
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過熟白内障 |
手術難易度が非常に高くなる |
炎症・眼圧上昇後は視力回復困難 |
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合併緑内障併発 |
視神経が傷んでいれば回復せず |
早期治療が絶対に必要 |
早期発見・予防のポイント
- 「まぶしい」「かすむ」段階で眼科受診
- 年1回の眼底・眼圧検査
- 糖尿病・アトピーなど合併疾患の管理
- 紫外線・喫煙の抑制
→ 紫外線や喫煙は白内障進行の最大リスク因子。
まとめ
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段階 |
状態 |
失明リスク |
回復の可否 |
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初期 |
軽度の濁り |
なし |
点眼で進行抑制 |
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中期 |
視力低下 |
低い |
手術で完全回復 |
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末期 |
光しか分からない |
高い |
手術で多くは回復 |
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過熟期 |
炎症・眼圧上昇 |
非常に高い |
回復困難(失明) |
白内障を「まだ見えているから」と先延ばしにした結果、水晶体が溶け出し、急激に視力を失ってしまった症例も実際にあります。
こうした経過については、下記動画で医師が詳しく解説しています。






















