黄斑浮腫(おうはんふしゅ)とは、網膜の中心部にある黄斑(おうはん)に液体がたまり、厚みを持ったりシワがよったりする病態です。黄斑は視力にとって最も重要な部分であり、ここに異常が起こると視力低下や歪み(変視症)が現れます。
正常ではない血管の透過性亢進(血液からの漏れ)によって、組織間に液体がしみ出すことで発症します。
引用:見えるをいつまでも.jp
主な原因
黄斑浮腫は、さまざまな疾患や治療によって起こります。
1. 糖尿病網膜症
- 最も多い原因で、高血糖により毛細血管が障害され、液が漏れて浮腫が生じます(糖尿病黄斑浮腫)。
2. 網膜静脈閉塞症
- 網膜の静脈が詰まることで、静脈圧が上昇し、血液成分が漏れ出すことによって起こります。
3. ぶどう膜炎(ぶどう膜の炎症)
- 免疫反応や感染症に伴って炎症が起き、血管が漏れやすくなる
4. 白内障手術後(嚢胞様黄斑浮腫)
- まれに術後数週間〜数ヶ月で発症(Irvine-Gass症候群)します。
5. 加齢黄斑変性
- 滲出型(ウェットタイプ)では新生血管からの漏出が原因で浮腫をきたすことがある
発症機序(メカニズム)
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- 網膜血管の障害
糖尿病・閉塞症・炎症などで毛細血管の内皮細胞が傷つく - 血液網膜関門(BRB)の破綻
本来、血管と網膜の間にあるバリアが壊れ、血液中の水分やタンパク質が漏れ出す - 黄斑部に液体がたまる
組織間に滲出液が溜まり、浮腫を形成 - 視細胞の機能低下
光を感知する視細胞が障害され、視力低下や歪みが起こる
- 網膜血管の障害
💊 治療法
原因によって異なりますが、以下の方法が用いられます。
1. 抗VEGF薬注射
- 使用される薬の例:アフリベルセプト(アイリーア®)、ラニビズマブ(ルセンティス®)
- 血管の漏れを抑える作用があり、糖尿病黄斑浮腫や網膜静脈閉塞症由来の浮腫に有効です。
2. ステロイド注射またはステロイド徐放性インプラント
- 使用される薬の例:トリアムシノロン、デキサメタゾン(オズルデックス®)
抗炎症作用があり、ぶどう膜炎由来の浮腫や抗VEGFが効きにくい場合に使います。
3. NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)点眼
- 使用される薬の例:ブロムフェナク(ブロナック®)、ケトロラック(アキュアリーフ®)など
炎症を抑え、術後の黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫)予防・治療に使用されます。ステロイド点眼と併用されることも多くあります。効果は穏やかですが、安全性が高く、長期投与にも向きます。
4. レーザー治療
- 漏れている血管をレーザーで焼灼。糖尿病網膜症などで局所的な漏出がある場合に適応
5. 全身のコントロール
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血糖コントロール(HbA1cを下げる)
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高血圧の管理
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原因疾患の治療(ぶどう膜炎の免疫抑制など)
🔮 予後
- 早期発見・早期治療で予後は比較的良好
- 放置すると視力は不可逆的に低下することもある
- 原因疾患のコントロールが不十分だと再発しやすい
- 定期的な眼底検査やOCT(光干渉断層計)による経過観察が重要
🧭 患者さんへのアドバイス
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- 視力のゆがみやぼやけを自覚したらすぐ眼科へ
- 糖尿病の方は定期的に眼底検査を受けましょう
- 黄斑浮腫の治療は1回では終わらず、継続治療が必要なことが多いので途中でやめたりせず医師の指示に従って治療を受けましょう