「中心性漿液性脈絡網膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいみゃくらくもうまくしょう)」は、網膜の中心(黄斑部)に水(漿液)がたまり、視力や視野に異常が出る疾患です。30〜50代の働き盛りの男性に多く、ストレスとの関連も指摘されています。
引用:公益財団法人日本眼科学会
🔍 病名の意味
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- 中心性:網膜の中心部(=黄斑)に起きる
- 漿液性:血液成分の「水分」が漏れ出してたまる
- 脈絡網膜症:脈絡膜から網膜にかけての病気
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👁 症状
主な症状 |
説明 |
🔹 中心がゆがんで見える(変視症) |
直線が曲がるように感じる |
🔹 視界の中心が暗い/ぼやける |
中心の視力が落ちる |
🔹 小さく見える(小視症) |
実際より物が小さく見える |
🔹 視力低下(0.5〜0.8程度) |
急激に落ちることも |
🔹 片目だけに出ることが多い |
両眼同時はまれ |
🧪 原因
明確な原因は不明ですが、以下の要因が関連しています:
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- 精神的ストレス
- ステロイドの使用(内服・吸入・外用)
- 交感神経の過剰な緊張(睡眠不足・過労)
- 高血圧やピロリ菌感染の関与も報告あり
🩺 診断方法
眼科では次のような検査で診断します:
検査名 |
内容 |
OCT(光干渉断層計) |
網膜の断面を画像で見て、水のたまり具合を確認 |
蛍光眼底造影(FA) |
造影剤で血管からの漏れを特定 |
自覚症状チェック |
アムスラーチャートなどでゆがみの評価 |
⏱ 経過と自然治癒
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- 約 80〜90%は3か月以内に自然治癒
- ただし再発しやすく、約半数が再発するといわれています
- 慢性化すると視力低下が長期化し、視細胞の損傷が残ることも
💊 治療
基本は「経過観察」
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- ストレス・ステロイドの回避で改善を待つ
- しみ出しの部分が黄斑の中心(中心窩)から離れている場合は、レーザー治療が行われることもあります
- しみ出し部分が中心窩にきわめて近い場合、レーザー治療はできないので内服薬(カルナクリン)による治療が一般に行われます。
慢性例・再発例では治療を検討
治療法 |
概要 |
PDT(光線力学療法) |
ビスダイン®という薬とレーザーを併用して漏れを抑える(保険適用) |
抗VEGF薬の硝子体注射 |
慢性例や滲出が強い場合に使用されることもある |
ピロリ菌除菌 |
関与が疑われる場合、内科での治療を勧めることも |
ミネラルコルチコイド拮抗薬 |
海外ではエプレレノンなどが使われるが、日本では未承認(2025年時点) |
注意点
- 見えにくい方の目を使って生活していると負担が大きくなるため、無理に目を使わないようにしましょう。見え方の異常を感じたら早めに眼科を受診することが大切です。
- 慢性化すると視力の回復が難しくなることがあるので、3か月以上改善しない場合は積極的な治療を検討します。
📷 アムスラーチャート(ゆがみのチェック用)
当院では、アムスラーチャートを使って自宅でも経過を確認できます。
まっすぐな格子線がゆがんで見える場合は、すぐにご相談ください。